親が倒れたときの緊急アクションガイド——72時間・1週間・1ヶ月以内にやることリスト
「お母さんが倒れた」——この一本の電話で、人生の流れは変わる。動揺している中で、何から手をつければいいか分からない。本記事は、親が突然倒れたとき72時間以内・1週間以内・1ヶ月以内に必ずやるべきことを、訪問リハビリの現場でご家族に何度も伝えてきた優先順位で整理する。
パニックになる前に、まずこのリストを順番に進めれば大丈夫だ。
最初の72時間——「命と情報」を確保する
倒れた直後の3日間が、その後の流れを大きく決める。やるべきことはシンプルだが、抜けると後で取り返しがつかなくなる。
- 救急搬送先の病院名・主治医名・病室を記録する——スマホのメモでもいい。「今後すべての連絡をする相手」を明確にする。
- 家族・親族への連絡網を作る——LINEのグループを作成し、状況を共有する場所を確保。情報の断片化を防ぐ。
- 勤務先に連絡し、有給または介護休暇の申請をする——「介護休暇は年5日(家族2人以上は10日)」を時間単位で取れる。当日の連絡で取得できる。
- 親の保険証・介護保険証・お薬手帳を病院に届ける——医療スタッフに必須。家にあれば家族が、なければ持ち物の中から探す。
- 親が住んでいた家のカギ・鍵の保管者を確認する——後の各種手続きで実家に何度も入ることになる。
1週間以内——「制度と人」を動かす
命の危険が一段落したら、医療と介護の制度を動かし始める。早く動くほど、選択肢が広がる。
病院のソーシャルワーカー(MSW)に必ず会う
すべての病院に「医療ソーシャルワーカー(MSW)」が配置されている。退院後の転院・在宅復帰・施設入所の相談窓口だ。家族から面談を依頼しないと、自動的には会えない。入院から1週間以内に必ず面談を依頼してほしい。
要介護認定を「すぐに」申請する
市区町村の介護保険担当窓口で要介護認定を申請する。認定が下りるまで通常1〜2ヶ月かかるが、申請日から遡って介護保険サービスが使える仕組みになっている。「退院後にゆっくり申請」は機会損失だ。入院中の家族が代理申請できる。
高額療養費の「限度額適用認定証」を取得する
入院費が高額になりそうな場合、加入している医療保険(協会けんぽ・国保など)に「限度額適用認定証」を申請する。これがあれば、窓口での支払いが自己負担上限額までで済む。後で還付申請する手間が省ける。
1ヶ月以内——「お金の流れと住まい」を整える
退院・施設入所・在宅復帰のいずれの場合も、お金と住まいの設計が必要になる。
- 親の口座と毎月の収支を把握する——通帳・年金額・固定費を一覧化。介護費用を誰がどう負担するかの判断材料になる。
- 住宅改修・福祉用具の検討を始める——介護保険で20万円までの住宅改修費が支給される。手すり・スロープ・段差解消など。
- ケアマネジャーを決める——要介護認定が下りたら、地域包括支援センターでケアマネを紹介してもらう。「合うケアマネ」を選ぶことが介護生活の質を決める。
- 家族間の役割分担を決める——「誰が・いつ・何を担当するか」をLINEや家族会議で明文化する。
親が亡くなった場合の対応——別ガイドへ
残念ながら親が亡くなった場合は、別の手続きが14日以内・3ヶ月以内・10ヶ月以内に発生する。死亡届・年金停止・口座凍結対応・相続放棄・相続税申告など——詳細は別記事で解説する予定だ。
「メモを残しておく」が後で効く
パニックの中でも、毎日のメモは絶対に残してほしい。
- 誰と電話したか(病院・自治体・ケアマネ・親族)
- 誰がいくら立て替えたか(領収書はすべて保存)
- 主治医から聞いた病名・治療方針・予後
- 退院・転院・施設入所の決定事項
このメモは、後の相続のときにも、きょうだい間の信頼確保にも、必ず役立つ。「あのとき何を言ったか・何にいくら使ったか」が記録されているだけで、家族間のトラブルが大幅に減る。
今すぐやること——倒れる前の「3つの準備」
本記事は「倒れた後」のガイドだが、最大のリスクヘッジは「倒れる前に親と話しておく」ことだ。次の3点だけは、親が元気な今のうちに確認しておきたい。
- 親の医療・介護に関する希望を聞いておく(延命治療・施設入所への抵抗感・「自宅で最期まで」の希望など)
- 親の保険証・通帳・印鑑の保管場所を共有する(緊急時にすぐ見つかるように)
- 勤務先の介護休暇・介護休業制度を確認する(取得方法・必要書類・上限日数を事前把握)
病院での「キーパーソン」を1人に絞る
家族が複数いる場合、病院との窓口(キーパーソン)を1人に絞ることが大事だ。複数の家族が個別に医師や看護師に連絡すると、情報が錯綜し、医療スタッフから「家族の意見がまとまっていない」と判断され、対応が遅れる原因になる。
キーパーソンは「医師から直接説明を聞く人」と「他の家族へ情報共有する人」の2つの役割を兼ねる。普段から親と話す機会が多い家族・地理的に近い家族・有給を取りやすい立場の家族——いずれかが担うのが自然だ。役割分担を最初の3日間で決めるだけで、その後の混乱が大幅に減る。
退院後の選択肢——4つのパターンを知っておく
急性期の治療が終わると、病院は「次の行き先」を求めてくる。選択肢は大きく4つだ。
- 回復期リハビリテーション病院——リハビリで在宅復帰を目指す(脳卒中・骨折後など)
- 地域包括ケア病棟——在宅復帰に向けた調整期間として利用
- 介護医療院・老人保健施設——医療と介護を兼ねた中間施設
- 自宅——訪問介護・訪問看護を組み合わせた在宅療養
どのパターンも一長一短がある。MSWに「うちの状況なら、どの選択肢が現実的ですか?」と率直に聞くと、地域の事情を踏まえた具体的な提案が出てくる。
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訪問リハビリ現場で見てきた「お金と家族」の当事者記録3本を、マガジンにまとめています。相続4,000万円の揉めごと全記録・介護保険1割でもシビアな家庭の実例・ゴールドNL 100万円修行の月別履歴——数字と感情の両面から書きました。