要介護認定「軽く出る」問題。調査員が来る前にやる3つの準備
「今日は、頑張って立って見せなさい」
80代のBさんの娘さんが、調査員が来る前の朝、母にそう言った。 娘さんに悪気はなかった。見栄もあった。そして、結果は要介護2が要支援1。
在宅介護で必要だったデイサービス週3回は、週1回までしか使えなくなった。 半年後、Bさんは転倒で大腿骨骨折、寝たきりになった。
訪問リハビリで、こういう「認定が軽く出たばっかりに」の事故を、何度も見てきた。
この記事は、調査員が来る前の3つの準備と、当日のNGを、現場目線でまとめたもの。
結論:認定の「軽く出る」を防ぐ3つの鉄則
- 調査員の前で「普段と違う頑張り」をしないことを、親と合意する
- 1週間前から、困っていることを日記で可視化する
- 主治医意見書の主治医に、事前に情報提供する
要介護認定の基本構造
要介護認定は2段階。
- 1次判定:訪問調査員が74項目をチェック → コンピュータで要介護度の目安を出す
- 2次判定:主治医意見書+調査票を、介護認定審査会が最終判定
つまり、訪問調査員の聞き取り+主治医意見書が結果を決める。 ここを押さえれば、実態に近い認定が取れる。
準備1:調査の1週間前から「困りごと日記」をつける
調査員は30分〜1時間で「普段の状態」を把握しようとするが、本人も家族も、緊張で本当のことが言えない。
対策として、調査日の1週間前から、家族がA4用紙1枚でメモ。
- 食事:1人で食べられるか/こぼすか/時間はどれくらい
- トイレ:間に合うか/失禁回数/夜間
- 入浴:自力で入れるか/洗髪は/転倒リスク
- 歩行:距離/段差/バランス崩す頻度
- 認知:同じ話を繰り返す/物忘れ/火の不始末
- 気分:泣く/怒る/不安がる頻度
これを調査員にそのまま渡す。口頭より書面のほうが正確に伝わる。
準備2:本人と「ありのままで見てもらう」合意を取る
調査当日、多くの高齢者は外行きモードになる。
- 普段は車椅子なのに、玄関まで自力で歩いて出迎えてしまう
- 認知症で名前を忘れるのに、調査員には「〇〇さんですね」と答える
- 失禁しているのに「トイレは自分で行けます」と言う
これが「軽く出る」最大の原因。
前日、本人にこう伝える:
「明日来る人は、助けを決める人だから。できないことは、できないまま見てもらうのが、いちばん良いんだよ」
認知症でも、穏やかに何度か伝えると、当日の緊張が少し和らぐ。
準備3:主治医意見書の主治医に、事前に家族から伝える
主治医意見書は、認定の2次判定で最も重視される書類。 ただし、月1回しか診ていない主治医には、自宅での実態が見えない。
調査の予約が決まったら、主治医の診察時に家族が一緒に行く:
- 自宅での困りごと日記を見せる
- 動画(転倒ヒヤリ、失禁場面)を見せる(本人同意のもと)
- 「介護認定の意見書をお願いしたい」と明確に伝える
主治医は忙しい。情報がこちらから行かないと、外来で見えた”座ってる姿”だけで書かれる。
調査当日のNG3つ
- 家族が横から「全部」答えてしまう
調査員は本人の反応を見たい。家族は補足役に徹する。
- 「大丈夫です」を連発する
多くの高齢者は「迷惑をかけたくない」で小さく答える。 家族が「でも、本当はね」と補う。
- 調査員を玄関で帯上げ卙めます
30分はかかる。キッチンやトイレまで案内して、動線を見てもらう。
わたしの視点:訪問リハで見た「軽く出た結果」
認定が1段階軽く出ると、使えるサービスが:
- デイサービス:週3回 → 週1回
- 訪問リハ:週2回 → 週0〜1回
- ショートステイ:月5日 → 0日
- ヘルパー:週5回 → 週2回
結果、家族の介護負担が3〜5倍に増える。 そして、介護離職や、家族の心身不調が連鎖する。
「軽く出た」時の対処法
認定結果に納得できない場合:
- 区分変更申請(いつでも可能)
- 不服申立て(通知から3ヶ月以内、都道府県の介護保険審査会へ)
ただし、再調査に1〜2ヶ月かかる。最初の調査で適切にが一番。
すぐやるべき3つのこと
- 調査予約が入ったら、1週間分の困りごと日記をつけ始める
- 調査の前の外来診察で、主治医に情報提供する
- 当日、本人に「ありのままで」を伝える
よくある質問
Q. 認定は何年で更新? A. 初回は原則6ヶ月、更新後は12〜36ヶ月。状態変化があれば区分変更申請を。
Q. 調査員に「軽く出るように」頼めますか? A. 依頼はできません(公正性の観点から)。「実態どおりに見てほしい」と伝えるのが正しいアプローチです。
Q. 認知症の親が調査で嘘をついたら? A. 家族が事前に困りごと日記を渡し、調査員に補足してください。調査員は本人と家族の両方から聞く権利があります。
まとめ
要介護認定は、家族の準備が7割を決める。 調査員が来る前の1週間で、家族ができることは多い。
親の尊厳と、家族の生活基盤——両方守るために、 「ありのまま見てもらう」が鉄則。
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参考(一次情報)
- 厚労省「要介護認定に係る制度」
- 厚労省「要介護認定基準時間」