制度を知ったのは、使おうとしたときだった。

母が倒れて、仕事を休まなければならない日が続いた。「介護休業」という制度があると聞いて、職場に相談した。93日間、休業できる制度だと教えてもらった。

でも、申請できなかった。

病気の進行が、書類より速かった

介護休業を取るには、書類が必要だ。対象家族の状態を証明するもの。医師の診断書。会社への申請書類。それらを揃えている時間が、なかった。

病状の進行が速すぎた。病院に行けば母の状態が変わっている。書類を集めようとすると、また状態が変わる。「今日は診断書をもらいに行く」と思っていた日に、急変の連絡が来る。

結果として、介護休業の申請は通らなかった。代わりに取ったのは、欠勤だった。給与は出ない。有給も使い果たした。それでも行かなければならないから、行った。

職場でかけられた言葉

精神的に限界に近い時期に、職場でこう言われた。

「鬱の診断もらえばいいじゃないですか」

悪気はなかったのかもしれない。でも、傷ついた。介護をしながら働く人間が、どれだけのものを抱えているか。その状態で「書類を揃えろ」「診断書を取れ」という言葉は、追い打ちにしかならない。

制度は存在する。でも「使えるタイミング」は、制度が想定している状況より、ずっと短い

介護休業制度とは——知っておきたい基本

経験した後だからこそ、あらかじめ知っておいてほしいことがある。

介護休業は、要介護状態の家族がいる場合に取得できる休業制度だ。対象家族1人につき通算93日、最大3回に分けて取得できる。

項目内容
取得できる日数対象家族1人につき通算93日
分割取得最大3回まで分割可
給付金休業中は雇用保険から介護休業給付金(賃金の67%)
申請タイミング原則として休業開始の2週間前までに申請
対象配偶者・父母・子・兄弟姉妹・祖父母など

重要なのは「休業開始の2週間前までに申請」という点だ。急変してから申請しようとしても、間に合わないことがある。これが私の失敗だった。

介護休業が使えなかったときの代替手段

私のように間に合わなかった場合、または会社の理解が得られない場合、以下の制度が使える可能性がある。

  1. 介護休暇(年5日)
    介護休業とは別に、年間5日(対象家族が2人以上なら10日)まで取得できる「介護休暇」がある。こちらは1日単位・半日単位でも取得可能で、申請書類も少なくて済む。
  2. 有給休暇の計画的取得
    会社と交渉して、まとまった有給を先に確保する方法。権利として主張できる。
  3. フレックス・時差出勤の活用
    介護のための柔軟な働き方を求める権利は法律で守られている。申し出ること自体を恐れなくていい。
  4. 傷病手当金(自分が体調を崩した場合)
    介護によって自分の体調が限界になった場合、医師の診断があれば傷病手当金(標準報酬日額の3分の2)を受給できる可能性がある。
🦉
介護休業って、急いで申請しようとすると間に合わないんですね…
🛡️
そうなんです。だから「親が要介護になりそうだ」と感じた段階で、まず会社の人事部か総務に相談だけしておくのがおすすめです。申請する前に「こういう制度があるか確認したい」という段階でOKです
🦉
先に話を通しておくだけで、全然違いますよね
🛡️
それと、介護休業中の給付金(賃金の67%)があることを知っておくと、経済的な不安が少し和らぎます。申請前からお金の計算をしておくと判断が早くなります

収入が途絶えるリスク——数字で考える

私が欠勤を続けていた間、月収は大きく減った。有給を使い果たした後の欠勤は、給与がゼロになる。介護休業給付金を受けていれば賃金の67%が保障されたが、私はその制度を使えなかった。

仮に月給が25万円の人が介護休業を取れた場合と取れなかった場合を比べる。

ケース月収への影響
介護休業取得(給付金あり)約16.75万円(67%)を受給
有給消化通常通り25万円
有給後の欠勤0円(無給)

介護離職まで至ると、収入がゼロになるうえに退職金・厚生年金・雇用保険の受給資格にも影響する。「仕事を辞めないと介護できない」は、最後の手段だと知っておいてほしい。

制度は「使おうと思った時点から」動かす

私が一番後悔しているのは、「もっと早く動けばよかった」という点だ。母の状態が落ち着いていた時期に、職場への相談も、書類の確認も、何もしなかった。

介護は「始まった」と気づいた瞬間から、もう進んでいる。制度の申請は、「まだ大丈夫」と思っている段階から動き始めるべきだった。

あなたが今、「親が少し心配になってきた」という段階にいるなら、今日から動いてほしい。勤務先の人事部への確認だけでいい。「介護休業制度はありますか?」その一言から始めるだけでいい。

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ゆるり
リハビリ職の長男。片道2.5時間の距離にある実家で、88歳の祖母の介護と母の相続に向き合っています。看護師だった母が一人で守り続けた家と家族を、今度は自分が守る番だと思っています。母の遺産を新NISAや高配当株で運用しながら、介護・仕事・家族の思い出を両立させるための試行錯誤を、同じ悩みを持つ方へ届けます。