2022年5月、私は27歳で母を亡くしました。
癌の告知から、わずか2ヶ月の闘病でした。「もっと時間がある」と思っていた。でも現実は、あっという間でした。
悲しむ間もなく始まったのが、相続という名の「現実」でした。この記事は、27歳の長男が経験した相続の全記録です。きれいごとは書きません。
母が癌になってからが、本当の始まりだった
告知を受けたとき、私がまず考えたのは「治療費をどう工面するか」ではありませんでした。正直に言うと、何も考えられなかった。頭が真っ白でした。
でも現実は容赦なく動いていきます。母が入院してすぐ、やらなければいけないことが山積みになりました。
- 通帳・キャッシュカードの把握
- クレジットカードの引き落とし確認
- 保険証券の整理
- 病室での付き添い
- 親戚への連絡
- 仕事との両立
お金の知識もない。相続の経験もない。27歳の自分には、あまりにも重すぎる現実でした。
総額4,000万円の遺産——そこから始まった家族の「本音」
母が遺した遺産は、総額にして約4,000万円でした。
私は長男として、単独で受け取れる分(約2,000万円)を相続しました。残りは姉2人と3人で均等に分けることになりましたが——ここからが、本当の揉め事の始まりでした。
姉たちは嫁に出ていましたが、母の面倒を見てきたのは事実です。子育て中で、お金がかかる時期でもありました。「自分たちにも権利がある」という気持ちは、痛いほどわかります。
でも私は、実家の費用をすべて一人で負担し続けていました。祖母の生活費、固定資産税、修繕費——誰も手伝ってくれない現実がありました。
相続はお金の問題ではなく、「感情」の問題だった
結果として、姉たちが遺産の多くを受け取る形で決着しました。一応、解決はしました。
でも「解決」という言葉が正しいのかどうか、今でもわかりません。家族の空気は、あの相続を境に確実に変わりました。ギスギスした空気は、しばらく続きました。
相続で揉めるのは「お金が原因」だと思っていました。でも本当は違います。揉めるのは、それまで誰も口にしなかった「本音」が、お金をきっかけに一気に噴き出すからです。
「誰が一番親の面倒を見てきたか」「誰がどれだけ犠牲にしてきたか」——数字では測れない感情が、相続の場でぶつかります。それが、家族をバラバラにします。
一番しんどかったこと——悲しむ暇もなかった
相続で一番つらかったのは、実は手続きの煩雑さではありませんでした。
母がまだ闘病中なのに、身辺整理をしなければいけないこと。母の部屋を片付け、通帳を確認し、カードを整理する。服の匂いが残っている部屋で、事務的な作業をこなす——あの感覚は、今でも忘れられません。
さらに、お金の知識がなかった。銀行口座が凍結されること、相続放棄の期限、遺産分割協議書の作り方——何も知らないまま、時間だけが過ぎていきました。
そして親戚付き合い。古い慣習を大切にする土地柄で、葬儀の段取り、法要、親戚への挨拶。仕事も介護も、全部同時進行でした。
今だから言える「後悔」と「教訓」
後悔はない、と言えば嘘になります。ただ、やり直したいことは一つだけです。
「お金のことを、家族みんなで話しておけばよかった」
口座はどこにあるか。保険は何に入っているか。実家をどうしたいか。相続が起きたときに誰が何を受け取るか。
こういった話は、縁起が悪いと避けられがちです。でも、話せるうちに話しておかないと、残された家族が全部背負うことになります。私がそうでした。
相続を経験して、お金と向き合うことにした
あの経験が、私をお金と向き合わせました。
相続した2,000万円を「ただ持っているだけ」にはしたくなかった。母が遺してくれた大切な資産を、守り、育て、祖母の介護費用や実家の維持に使いたかった。
新NISA、高配当株、楽天経済圏——一つひとつ学びながら、今では運用益も含めて資産を維持できています。お金があるから、介護の場面で「優しさ」を選べる。そう実感しています。
同じ立場にいる方へ
「実家をどうすればいいか」「兄弟と揉めそうで怖い」「相続の手続きが全くわからない」——そんな方へ、一つだけ伝えたいことがあります。
一人で抱え込まないでください。そして、今すぐ家族とお金の話を始めてください。縁起でもないと思っても、それが家族を守ることになります。
私の試行錯誤が、誰かの「ゆるり」とした時間になれば、それだけで十分です。