📅 最終確認日:2026年4月29日(情報の鮮度を定期的に見直しています)

「おひとりさま」が亡くなった後、誰が動くのか。

身寄りのない方が孤独死した場合、誰が遺体の引き取り・葬儀・家の片付け・役所手続きを行うのか。答えは「誰もいなければ、市区町村」。しかしそれは、税金で行われる最低限の処置だ。本人が望む形での旅立ちとは、かけ離れることが多い。

訪問リハビリの現場で、身寄りのないひとり暮らしの方を多く担当してきた。「私が死んだあと、どうなるんだろう」という不安の声を、何度も聞いてきた。その答えの一つが、死後事務委任契約だ。

死後事務委任契約とは何か

死後事務委任契約とは、「自分が死んだ後にやってほしいこと」を生前に第三者と契約しておく仕組みだ。家族がいなくても、信頼できる人や専門家(司法書士・行政書士・NPO法人など)に依頼できる。

委任できる主な内容具体例
葬儀・火葬希望する形式・場所の指定
遺品整理家の片付け・不用品処分
役所手続き死亡届・年金停止・保険解約
医療費・施設費の精算入院費・介護施設費の支払い
デジタル遺品の処理SNS・メール・サブスクの解約
ペットの引き渡し預け先の手配

費用の目安

費用は依頼する内容と依頼先によって大きく異なるが、一般的な目安は以下のとおり。

  • 契約手数料(公正証書作成含む):10〜30万円程度
  • 実際の手続き費用(葬儀・遺品整理など):別途実費
  • 預託金として預ける金額:50〜100万円程度が目安

費用が不安な場合は、社会福祉協議会や自治体が提供する低コストのサービスも検討できる。

🦉うめさん
「使わずに済む準備」ってどういう意味?準備したのに使わない方がいいの?
🛡️まもるくん
そう。理想は「契約しておいたけど、実際には家族や友人が動いてくれた」という結果。でも誰もいなかった時のために備えておく。傘と同じで、使わないために持つ。それが「使わずに済む準備」の意味。

誰に依頼するか

  • 司法書士・行政書士——法的な書類作成が確実。費用はやや高め
  • NPO法人・一般社団法人——比較的安価。ただし団体の継続性を確認すること
  • 信頼できる知人・友人——費用は低いが、負担をかけてしまうリスクがある
  • 自治体・社会福祉協議会——低所得者向けの制度がある地域も

いつ準備すればいいか

答えは「元気なうちに」だ。認知症が進行したり、判断能力が低下してからでは契約できない。公正証書を作成するためには、本人の意思能力が必要だ。

60代のうちに検討を始めることを、現場の経験から強く勧める。「まだ早い」と思った時が、ちょうどいいタイミングだ。

現場で見た「誰もいなかった」現実

訪問リハビリで担当していた80代の方が、ある朝突然亡くなった。独居で、連絡できる親族がいなかった。市区町村が動いたが、その方が望んでいた形での葬儀ではなかった。遺品の中に「○○に連絡してほしい」という走り書きがあったが、法的効力はなかった。

死後事務委任契約があれば、その走り書きが「契約書」になっていた。


📌 おひとりさまの老後準備について→ 【相続準備チェックリスト完全版】訪問リハビリ職が伝える「親が元気なうちにやること」全22項目

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どこに依頼するか——選び方の基準

死後事務委任契約の依頼先は大きく4つある。それぞれに特徴があり、自分の状況と費用感に合わせて選ぶ。

依頼先特徴向いている人
司法書士・行政書士法的に正確。公正証書作成も対応資産がある・複雑な手続きがある
NPO法人・一般社団法人費用が比較的安め。見守りサービスも費用を抑えたい・日常の見守りも欲しい
社会福祉協議会低所得者向けの制度あり費用が難しい・公的サービスを希望
信頼できる友人・知人費用なし・柔軟。ただし法的拘束力が弱い身近に頼れる人がいる場合の補助として

依頼先を選ぶときは「万が一、依頼先の組織が先に解散・倒産したらどうなるか」まで確認しておきたい。預託金の管理方法や、継承先の有無を事前に聞いておくことが重要だ。

エンディングノートとの違い・使い分け

エンディングノートは「希望を書き留めておくもの」であり、法的拘束力はない。「葬儀はこうしてほしい」と書いても、家族が無視することもある。

一方、死後事務委任契約は法律上の契約であり、受任者は義務を負う。ただし費用がかかる。

最も現実的な組み合わせは「エンディングノートで意思を整理し、重要なことだけ死後事務委任契約で法的に担保する」だ。全部を契約に入れると費用が膨らむため、「これだけは必ずやってほしい」という最低限を契約し、それ以外はノートに記録しておく方法が使いやすい。

見守り契約・任意後見との組み合わせ

死後事務委任契約は「死後」の手続きをカバーする。しかし認知機能が落ちた「死ぬ前」の時期にも備えが必要だ。この3つをセットで考えると、おひとりさまの備えが完成する。

  • 見守り契約——定期的に連絡・訪問してもらい、異変を早期に発見してもらう
  • 任意後見契約——認知機能が低下した際に、財産管理や契約行為を代わりにやってもらう
  • 死後事務委任契約——亡くなった後の手続き一切を依頼する

同じ専門家(司法書士やNPO)に3つまとめて依頼することもできる。一度相談に行けば、自分に何が必要かを整理してもらえる。

今すぐやること、3つだけ

  1. 自分の「死後に必要な手続き」をリストアップする——口座・保険・デジタルサービス・ペット・住居の片付けなど。書き出すだけで頭が整理される
  2. 地元の司法書士会・行政書士会・社会福祉協議会のWebサイトを見てみる——無料相談を受け付けていることが多い
  3. エンディングノートを1冊買ってくる——書き始めることで、自分が何を不安に思っているかが見えてくる

「まだ元気だから」という言葉で先送りにしてきた準備が、一番必要なのは「元気なうち」だ。

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✍️ この記事を書いた人

ゆるり|訪問リハビリ専門職

現場で1,000人以上のご家族と関わってきた訪問リハビリ職。27歳で母を亡くし、密葬60万円・相続登記45万円・兄弟3人で揉めた相続を経験。

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ゆるり
リハビリ職の長男。片道2.5時間の距離にある実家で、88歳の祖母の介護と母の相続に向き合っています。看護師だった母が一人で守り続けた家と家族を、今度は自分が守る番だと思っています。母の遺産を新NISAや高配当株で運用しながら、介護・仕事・家族の思い出を両立させるための試行錯誤を、同じ悩みを持つ方へ届けます。