認知機能が落ちた親に、クレカを使わせ続けた結末
「これ、お母さんが頼んだのよ」と娘さんは言った。
玄関に届いていたのは、通販の段ボール箱5個。浄水器、羽毛布団、健康食品、サプリメント、電気マッサージ器。合計請求額37万円。「見本を1回お試し」のはずが、定期購入に切り替わっていた。
80代の利用者さんは、はっきり覚えていなかった。「優しいお兄さんが、電話で相談に乗ってくれて……」
認知機能が少し落ちた親にクレカを持たせ続けると、こういう事故が起きる。1件あたりの被害は数万〜数十万円。気づかずに数ヶ月続いていたケースも珍しくない。
「少し落ちた」段階が一番危ない
重度の認知症になれば、家族が管理するようになる。問題は「まだ普通に話せる」「一人でどこかへ行ける」レベルの初期段階だ。
この段階は、「おかしいな」と気づきにくく、本人も自覚しにくい。電話勧誘・ネット通販・訪問販売の格好のターゲットになる。
カード事故を防ぐ5つの対策
- 利用限度額を下げる——カード会社に電話すれば、限度額を月3〜5万円程度に下げられる。本人の意向を確認しながら実施する
- 家族カードに切り替える——子が主契約者の家族カードを渡す。明細が主契約者にも届くので、不審な利用をすぐに検知できる
- 利用通知サービスをオンにする——多くのカード会社が、利用のたびにメール・アプリ通知を送る機能を提供している。無料で設定できる
- ネット通販・電話注文を制限する——「カードはお店でしか使わない」というルールを親と決め、通販サイトのアカウントを整理する
- 定期的に明細を一緒に確認する——月1回、明細を一緒に見る習慣をつける。会話のついでにできる「見守り」になる
それでも事故が起きたら——クーリングオフと消費生活センター
被害が発生してしまった場合の対処法:
- クーリングオフ(契約から8日以内)——訪問販売・電話勧誘販売なら無条件解約できる
- 消費生活センター(188)——全国どこからでも相談できる。対処法を一緒に考えてくれる
- カード会社への申告——不正利用・詐欺被害として申告すると、チャージバック(返金)の手続きができる場合がある
未来の「文明の使い方」を一緒に考える
キャッシュレス・ネット通販が当たり前になった時代に、クレカを持てないのは不便だ。「使わせない」ではなく、「一緒に安全に使う」仕組みを作るのが正解だと思っている。
家族カードと利用通知の設定だけで、事故の多くは防げる。今日、親のカードの設定を確認することから始めてほしい。
それでも「使わせたい」——その気持ちを大切にしながら
一方で、カードを取り上げることへの罪悪感を感じている家族も多い。「まだ自分でやりたい」という親の気持ちを、完全に否定する必要はない。
訪問先で実践して効果があったのは、「一緒に買い物に行く頻度を増やして、カードを使う場面を自分が同席できる状況に絞る」アプローチだ。ネット通販と電話注文を制限した上で、実店舗では本人に払ってもらう——この折衷案は、尊厳を保ちながらリスクを下げられる。
認知機能が低下したら「任意後見」も視野に
カードの管理だけでなく、預金・不動産・医療同意など「お金と権利」全体を守る制度として「後見制度」がある。
- 任意後見——本人が元気なうちに「将来、認知症になったらこの人に財産管理を頼む」と契約しておく。本人の意思が反映されやすい
- 法定後見——すでに判断能力が低下した後で、家庭裁判所が後見人を選任する。家族が選ばれるとは限らない
「カードの使い過ぎが心配」な段階では、まず利用制限とモニタリングで対応できる。しかし「銀行の窓口で大金を引き出そうとしている」「知らない人に贈与しようとしている」レベルになったら、後見制度の検討が必要だ。早めに家族会議を開いて、方針を決めておきたい。
サブスク・デジタル課金にも注意
クレカに紐付いたサブスクリプションサービス(動画・音楽・健康アプリ等)も盲点になりやすい。本人が「申し込んだ記憶がない」まま毎月課金されているケースは多い。
対処法は、カード明細を毎月一緒に確認すること。「これ、なんのサービスかわかる?」と聞きながら見ることで、本人の記憶力の変化にも気づきやすくなる。家族のコミュニケーションの場として活用できる。
今日できる確認リスト
- □ 親のカードの利用限度額を確認する(カード会社のアプリ・明細)
- □ 利用通知メール・アプリ通知をオンにする
- □ 直近3か月の明細を一緒に見る
- □ 「電話での勧誘でクレカ番号を教えないで」と伝える
- □ ネット通販の設定で「1クリック購入」をオフにする
1日10分の確認が、37万円の被害を防ぐ。今日、親のカード明細を一緒に開いてみてほしい。
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✍️ この記事を書いた人
ゆるり|訪問リハビリ専門職
現場で1,000人以上のご家族と関わってきた訪問リハビリ職。27歳で母を亡くし、密葬60万円・相続登記45万円・兄弟3人で揉めた相続を経験。