連絡したら、止まった

母が旅立った翌朝。 銀行に「母が亡くなりました」と電話をかけた。落ち着いた女性の声が返ってきた。

「お気落としのことと存じます。お手続きのご案内をお送りいたします。なお、本日よりお口座は凍結となります」

凍結。

その言葉の重さに気づいたのは、その日の午後、葬儀社から請求書を受け取ったときだった。 葬儀費用 120万円。父の年金振込口座は止まっている。公共料金の引き落としも、もうすぐ。

介護の仕事で「こういう話」は何度も聞いていたのに、当事者になるとまた違う。 この記事では、口座凍結のあと、家計を止めないためにわたしが実際にやった7つのことを、順番に記録しておく

🦉うめさん
突然、親の口座が凍結されたって連絡が来て…どうしたらいいんでしょう?
🛡️まもるくん
まず落ち着いて!手順を踏めば解除できます。どんな状況かを確認しながら一緒に対処法を考えましょう。

結論:凍結は「連絡した瞬間」に始まる

  • 銀行は死亡届の受理ではなく、家族からの連絡で凍結する
  • 凍結解除には戸籍謄本一式+相続人全員の実印が必要で、早くて2〜3週間
  • その間、葬儀費用・公共料金・住宅ローンは止まらない
  • 2019年から使える「預貯金の仮払い制度」で、最大150万円までは先に引き出せる

1. 銀行への連絡タイミングを、意図的に遅らせる(合法)

口座凍結は、家族が銀行に連絡した時点で発生する。 死亡届が役所に出ても、銀行は自動で知らされない。

葬儀費用の振込や、当座の生活費の引き出しが必要なら、必要な金額を引き出してから連絡するという実務判断がある。

ただし:

  • ATMでの大口引き出しは履歴が残る
  • あとで相続人全員に「使途説明」が必要になる
  • 葬儀領収書は必ず保管する

わたしは、葬儀費用の前払い50万円をATMで引き出してから、銀行に連絡した。 引き出した金額と使途は、相続人全員(兄・弟・わたし)に事前LINEで共有した。これが後の遺産分割協議を揉めさせないコツ。


2. 葬儀社に「請求を2週間待ってもらえるか」確認する

多くの葬儀社は、請求書発行から2週間〜1ヶ月の支払い猶予を持っている。口座凍結中という事情を話せば、さらに延ばしてくれるところも。

わたしが使った葬儀社は「お支払いは四十九日までで構いません」と言ってくれた。 遠慮せず、事情を話す。これが一番効く。


3. 公共料金の引き落とし口座を、先に変える

電気・ガス・水道・NHK・インターネット・携帯電話。 親名義の契約が、親の凍結口座から引き落とされていると、次回以降、滞納になる。

  • 電気・ガス:Webマイページで引き落とし口座変更(即日反映)
  • 水道:自治体窓口で書類提出
  • NHK:電話一本で変更可
  • 携帯:契約者名義変更の手続き(身分証と死亡の事実を示す書類)

わたしは喪服のまま、葬儀の翌週にこの作業だけで半日使った。後回しにすると、電気が止まる。


4. 「預貯金の仮払い制度」を使う

2019年7月から、相続人1人あたり150万円までを仮払いできる制度が始まった(民法改正)。

  • 対象:凍結された預貯金
  • 上限:1金融機関あたり150万円、かつ預貯金額の1/3×法定相続分
  • 必要書類:戸籍謄本、本人確認書類、印鑑証明
  • 審査期間:1〜2週間

「葬儀費用が立て替えられない」「生活費が尽きた」という場合、まずこの制度を検討する。 私は父の生活費として月15万円を引き出した。

(参考:法務省「遺産分割前の相続預貯金の払戻し制度」)


5. 戸籍謄本の「出生〜死亡まで」を、1度で請求する

相続手続きで最も時間を食うのが、戸籍集め。 亡くなった親の「出生から死亡までの連続した戸籍」が必要になる。

  • 本籍地が複数ある場合、各役所に郵送請求
  • 兄弟姉妹のぶんも必要なケースあり
  • 2024年3月から「広域交付制度」で、最寄りの市区町村でまとめて取得可能に

わたしは広域交付で1日でそろった。これを知らず郵送請求すると、10日ロスする

(参考:法務省「戸籍の広域交付制度」2024年3月開始)


6. 相続人全員で「LINEグループ」を作る

揉める相続の9割は、情報の非対称から始まる。

  • 誰がいくら立て替えたか
  • どの書類が揃ったか
  • 何月何日に銀行窓口に行くか

これを相続人LINEグループで全部共有する。 「知らなかった」を作らないのが、相続で疲弊しないコツ。


7. 税理士に「無料相談」を1回だけする

相続税の基礎控除は 3,000万円+600万円×法定相続人数。 多くの家庭は基礎控除の範囲内だが、不動産を含めると超えるケースもある。

  • 都道府県税理士会の無料相談(年数回)
  • 地域の相続相談会
  • 税務署の「電話相談」(0570-783-073)

30分話すだけで、「申告が必要か」「10ヶ月以内に何をするか」が見える。


わたしの視点:訪問リハビリで見てきた「凍結後の家計崩壊」

訪問先の90代の女性。夫を亡くした翌月、公共料金の口座振替が止まり、電気もガスも止まった。 認知機能が少し落ちていて、手続きができなかった。 ご本人は「死にたい」と泣いていた。

凍結は、単なる銀行の事務処理じゃない。残された家族の生活基盤を揺らす事件だ。 だから、健康なうちに、この7つを家族で共有しておくことをお勧めしたい。


すぐやるべき3つのこと

  1. 親の銀行口座リスト(金融機関・支店・残高目安)をメモしておく
  2. 葬儀費用の「とりあえずの現金」を、家族で合意しておく(50万円相当)
  3. 2024年開始の「戸籍広域交付」を覚えておく(最寄り役所で一括取得)

よくある質問

Q. 銀行に連絡しなければ凍結されませんか? A. 原則、連絡しなければ凍結は発動しません。ただし金融機関が新聞のお悔やみ欄や取引パターンから察知するケースもあります。

Q. 仮払い制度は何日で振り込まれますか? A. 金融機関により巾がありますが、書類完備から1〜2週間が目安です。

Q. 葬儀費用は相続財産から引けますか? A. はい、相続税の債務控除として葬儀費用(社会通念上相当な範囲)は控除対象です。


まとめ

口座凍結は、「親が亡くなった悲しみ」のあとに、追い打ちのように来る。 でも、7つの段取りを知っているだけで、家族の生活は止まらない

この記事を保存しておくだけで、いつか役に立つ日が必ず来る。 備えることが、愛する人を守るいちばん地味で強い方法だと思う。


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参考(一次情報)

  • 法務省「遺産分割前の相続預貯金の払戻し制度」
  • 法務省「戸籍の広域交付制度」
  • 国税庁「相続税の計算」
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ゆるり
リハビリ職の長男。片道2.5時間の距離にある実家で、88歳の祖母の介護と母の相続に向き合っています。看護師だった母が一人で守り続けた家と家族を、今度は自分が守る番だと思っています。母の遺産を新NISAや高配当株で運用しながら、介護・仕事・家族の思い出を両立させるための試行錯誤を、同じ悩みを持つ方へ届けます。