夫が先に逝ったあと、遺族年金はいくら入る?——計算と落とし穴
「夫が逝ったら、私はいくら受け取れますか」
この質問を、現場で何度聞いたかわからない。訪問リハビリの利用者さんの配偶者から、入院中の病室で、施設入居後の面談で。遺族年金は「もらえるとは聞いたけど、いくらかわからない」という人がほとんどだ。
知らないままでいると、受け取れるはずのお金を取り逃す。この記事で、計算式・申請方法・よくある落とし穴を整理する。
遺族年金には2種類ある
| 種類 | 対象 | 支給額の目安 |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 子のある配偶者・子 | 月約6.7万円+子の加算 |
| 遺族厚生年金 | 会社員・公務員の配偶者等 | 夫の老齢厚生年金の3/4 |
専業主婦・パート勤務の妻が、会社員の夫に先立たれた場合、遺族厚生年金の対象になることが多い。「子どもがいない」「末子が18歳を超えている」場合は遺族基礎年金はもらえないが、遺族厚生年金は受け取れる可能性がある。
遺族厚生年金の計算式
遺族厚生年金は、亡くなった夫が将来受け取るはずだった老齢厚生年金の4分の3が支給される。
ざっくりした目安:
- 夫の平均月収が30万円・加入期間20年 → 遺族厚生年金は月約5〜6万円程度
- 夫の平均月収が40万円・加入期間30年 → 月約8〜10万円程度
正確な金額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できる。亡くなった後でも、年金事務所で試算してもらえる。
よくある落とし穴3つ
- 自分の老齢年金との併給調整——妻自身が65歳になると、自分の老齢年金と遺族年金を両方はもらえず、有利な方を選ぶか一部のみ受給になる。知らずに損している人が多い。
- 再婚すると受給権が消滅する——遺族年金は再婚した時点で停止される。事実婚も含まれる場合がある。
- 子の年齢制限——遺族基礎年金は「18歳の年度末まで」の子がいる場合のみ。障害がある子は20歳未満まで延長される。
申請の流れ
- 死亡診断書・戸籍謄本・年金手帳などを準備
- 最寄りの年金事務所(または市区町村の国民年金窓口)へ持参
- 「遺族年金請求書」を提出
- 審査後、支給開始(通常2〜3ヶ月後)
請求は5年の時効があるが、できるだけ早く動くことを勧める。遡及支給もされるが、手続きが複雑になる。
現場で見た「知らなかった」の現実
訪問リハビリの現場で、夫を亡くした利用者さんが「遺族年金をもらっていない」ことに気づいたことがある。亡くなってから3年が経っていた。申請すれば3年分の遡及受給ができたが、必要書類の収集だけで2ヶ月かかった。
制度は存在する。でも「知っていて、動いた人」だけが受け取れる。
申請に必要な書類リスト
遺族年金の請求には、以下の書類が必要になる。亡くなった直後に全部揃えるのは辛いが、早めに動くと受給開始も早くなる。
- 死亡診断書のコピー(原本は返却されない場合も)
- 戸籍謄本(被保険者と請求者の続柄がわかるもの)
- 住民票(請求者と子の住民票)
- 年金手帳(被保険者・請求者の両方)
- 請求者の収入を確認できる書類(源泉徴収票等)
- 振込先口座の通帳またはキャッシュカードのコピー
「全部そろってから行こう」と思って先送りしている間にも、受給開始は遅れる。一部不足していても、まず年金事務所に相談に行くのが正解だ。
65歳になったら「選択」が必要になる
妻が65歳になると、自分自身の老齢年金も受給できるようになる。ここで多くの人が知らないルールがある。
遺族厚生年金と自分の老齢年金は、一部しか併給されない。具体的には、自分の老齢厚生年金が優先して支給され、遺族厚生年金との差額分が支払われる仕組みになった(2007年改正以降)。
たとえば、自分の老齢厚生年金が月3万円、遺族厚生年金が月6万円なら、差額の3万円だけが遺族厚生年金として支給される。合計は6万円で変わらないが、仕組みを知らないと「減った」と感じて混乱することがある。
65歳時点で年金事務所から「年金額の改定通知書」が届く。ここで選択の確認が行われるので、必ず中身を読んでほしい。
夫が妻より先に逝った場合——夫の遺族年金は受け取りにくい
遺族厚生年金は性別で扱いが違う。妻(夫に先立たれた女性)は年齢制限なく受給できるが、夫(妻に先立たれた男性)は原則55歳以上でないと受給できない(60歳から実際に支給)。
この非対称は「夫が稼ぎ手」という従来モデルに基づいていた。制度の変化は議論されているが、現時点ではこのルールが適用される。妻が亡くなった場合に遺族年金をあてにしていると、想定外の事態になることがある。
今すぐできること
- 「ねんきん定期便」を引き出しから出して見る——夫の年金見込み額がわかれば、遺族厚生年金の目安が計算できる
- 「ねんきんネット」に登録する——スマホから詳細な試算ができる
- 年金事務所に「試算」を依頼する——「もし今夫が亡くなったら、私はいくら受け取れますか」と聞くだけでいい。無料で教えてもらえる
- 受取口座を自分名義で持つ——夫名義の口座が凍結されると、年金振込先の変更手続きが必要になる
「知らなかった」で終わらせないために。今日、ねんきん定期便を一枚探してみてほしい。
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✍️ この記事を書いた人
ゆるり|訪問リハビリ専門職
現場で1,000人以上のご家族と関わってきた訪問リハビリ職。27歳で母を亡くし、密葬60万円・相続登記45万円・兄弟3人で揉めた相続を経験。