📅 最終確認日:2026年4月29日(情報の鮮度を定期的に見直しています)

「延命はしない」——その言葉を、親から直接聞けているだろうか。

認知症になったとき、本人が何を望むか。延命治療をするかどうか、施設に入りたいか、誰に介護してほしいか。これらは、なってからでは確認できない。だから、話せる今しかない。

「そのときになって考えればいい」では間に合わない

認知症は、発症してから進行するまでに時間がある。初期のうちは本人の意思疎通も可能だ。でも、多くの家族は「まだ元気だから」と話し合いを先送りにして、気づいたときには「本人に聞けない状態」になっている。

そうなると、家族が判断することになる。医師から「延命しますか?」と聞かれたとき、家族は本人の意思を知らないまま答えなければならない。そのプレッシャーと罪悪感は、計り知れない。

「本人がどうしたかったか、ちゃんと聞いておけばよかった」という後悔は、介護の現場でよく聞く言葉だ。

「延命はしない」——事前に話し合っていた家族の話

40代・関西在住のゆるりさんは、家族で介護や終末期についての話し合いを早い段階からしてきた。

「延命はしない、と決まっていたんです」

それは冷たい決断ではなく、本人の意思を家族全員が把握していた、ということだ。だから、いざそのときが来たときに、家族は「本人が望んでいたこと」を選べた。迷わずに済んだ。

事前に話しておくことで、家族の負担が減るだけでなく、本人が「自分の最後を自分で決められた」という尊厳にもつながる。

家族で話しておきたいこと、具体的に何を?

「介護の話をしたい」と思っても、何から切り出せばいいかわからない人は多い。以下の問いを参考にしてほしい。

  • 認知症になったら、施設に入りたいか、自宅にいたいか
  • 延命治療(胃ろう・人工呼吸器など)はどうしたいか
  • 介護してほしい人・してほしくない人はいるか
  • 最期はどこで迎えたいか(病院・自宅・施設)
  • 葬儀や埋葬についての希望はあるか

全部を一度に話さなくていい。「もしものとき、どうしたい?」という一言から始めるだけでいい。エンディングノートを一緒に書くのも、話し合いのきっかけになる。

話せる今が、一番大切な時間だ

認知症の話を家族でするのは、縁起が悪いことではない。

むしろ、「あなたのことを大切に思っているから、ちゃんと知りたい」という行為だ。本人も、自分の意思を伝えられる機会があることで、安心できる。

話せる今が、選択肢がある今だ。認知症になってからでは、本人が選べない。家族が選ぶしかなくなる。だからこそ、今話す。


今日、親に電話してみてほしい。「最近どう?」から始まる会話の中に、「もしもの話」を少しだけ混ぜてみる。それだけで、家族の未来はずいぶん変わる。

🦉

認知症の話って、家族で切り出しにくいよね。どうやって始めればいいんだろう。

🛡️

「任意後見制度」で本人の意思を法的に守る

話し合いをしても、それは「家族の記憶」にしか残らない。より確実な方法として、任意後見制度がある。元気なうちに、自分の判断能力が低下したときに誰に何をしてもらうかを、公正証書で決めておく制度だ。

「施設への入所の判断」「医療行為への同意」「資産の管理」など、認知症になってからでは決められないことを、今のうちに本人が指定できる。費用は公証役場の手数料(2〜3万円程度)と、実際に後見が始まったときの専門家報酬がかかるが、「家族に迷惑をかけたくない」という気持ちに応える最も確実な手段の一つだ。

エンディングノートに書いておくべきこと

法的拘束力はないが、家族への「気持ちの伝言」として有効なのがエンディングノートだ。以下の項目を記録しておくと、家族の判断に迷いがなくなる。

  • 認知症になったとき、施設か自宅か(どちらを希望するか)
  • 延命治療をするかどうか、胃ろう・人工呼吸器への考え
  • 葬儀の希望(規模・宗教・呼ぶ人)
  • 財産の概要と、大事な書類の保管場所
  • ペットがいる場合、世話をしてほしい人

「書いたこと」より「家族と一緒に確認したこと」のほうが意味がある。書いたら家族に見せておくのが最大のポイントだ。

今すぐやること——この週末に3つ

  1. 「認知症になったとき、どうしたい?」と親に聞く——正解を求めなくていい。「最近そういうニュース見てさ」という入り口でいい。
  2. エンディングノートを1冊買う(100円ショップにもある)。まず「名前と生年月日」だけでも書いてもらう。
  3. 任意後見制度について調べる——地域の法テラスや市区町村の相談窓口で無料相談ができる。
ニュースや身近な話題から入るのがおすすめだよ。「最近こういう話聞いたんだけど、うちはどうしたい?」って自然に聞けると、話しやすくなる。正解を出さなくていい、まず話すことが大事。

実際に家族で話し合いを進めるときは「相続準備チェックリスト完全版」が具体的な話し合いの項目を網羅している。実家の片付けと同時に進めたい方は「なくなった後に片付けるのは私たちだから、今捨てよう」も参考に。

📌 あわせて読みたい:相続登記の義務化——2027年3月の期限介護とお金・相続とお金まとめ

📌 関連記事:成年後見制度の使い方ガイド——任意後見・家族信託で「家族が決められる」

あわせて読みたい: 介護と仕事の両立術

📚 もっと深く知りたい方へ

訪問リハビリ現場で見てきた「お金と家族」の当事者記録3本を、マガジンにまとめています。相続4,000万円の揉めごと全記録・介護保険1割でもシビアな家庭の実例・ゴールドNL 100万円修行の月別履歴——数字と感情の両面から書きました。

📚 マガジンを見る ¥1,000(単品合計より¥100お得)

✍️ この記事を書いた人

ゆるり|訪問リハビリ専門職

現場で1,000人以上のご家族と関わってきた訪問リハビリ職。27歳で母を亡くし、密葬60万円・相続登記45万円・兄弟3人で揉めた相続を経験。

𝕏 @y_simple_care

この記事が役に立ったら
Xでシェアしていただけると励みになります 🙏

𝕏 この記事をXで共有する

Xで最新記事・note新作情報を発信中 → @y_simple_care

ABOUT ME
アバター画像
ゆるり
リハビリ職の長男。片道2.5時間の距離にある実家で、88歳の祖母の介護と母の相続に向き合っています。看護師だった母が一人で守り続けた家と家族を、今度は自分が守る番だと思っています。母の遺産を新NISAや高配当株で運用しながら、介護・仕事・家族の思い出を両立させるための試行錯誤を、同じ悩みを持つ方へ届けます。